三十六計さんじゅうろっけい

明清の交 撰者不詳 · 六套三十六計 · 現代語訳 · 全文無料で読めます

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目 次 総説 第一套 勝戦計 第一計 瞞天過海 第二計 囲魏救趙 第三計 借刀殺人 第四計 以逸待労 第五計 趁火打劫 第六計 声東撃西 第二套 敵戦計 第七計 無中生有 第八計 暗渡陳倉 第九計 隔岸観火 第十計 笑裏蔵刀 第十一計 李代桃僵 第十二計 順手牽羊 第三套 攻戦計 第十三計 打草驚蛇 第十四計 借屍還魂 第十五計 調虎離山 第十六計 欲擒故縦 第十七計 抛磚引玉 第十八計 擒賊擒王 第四套 混戦計 第十九計 釜底抽薪 第二十計 混水摸魚 第二十一計 金蟬脱殻 第二十二計 関門捉賊 第二十三計 遠交近攻 第二十四計 仮道伐虢 第五套 并戦計 第二十五計 偸梁換柱 第二十六計 指桑罵槐 第二十七計 仮痴不癲 第二十八計 上屋抽梯 第二十九計 樹上開花 第三十計 反客為主 第六套 敗戦計 第三十一計 美人計 第三十二計 空城計 第三十三計 反間計 第三十四計 苦肉計 第三十五計 連環計 第三十六計 走為上

総説そうせつ

全書の口開け。「六六三十六」は数合わせではない。三十六は古文では「数えきれないほど多い」ことを表す虚数で、計略に限りがないという意味である。本当の主張は後半にある——術の中に数があり、数の中に術がある。「数」は情勢の客観的な条件とその消長を、「術」は人の打つ手を指す。手を磨くばかりで条件を見なければ、その手はたいてい空を切る。末の二句は、この書が自分に課した制限である。機会は「空」いたところに生まれるもので、待って見つけるものであり、設計して作るものではない。わざと機会をこしらえれば、かえって当たらない。

六六三十六。数の中に術があり、術の中に数がある。陰と陽を調え合わせれば、機は空いたところに生じる。機は仕掛けて作れるものではなく、仕掛ければ当たらない。(「燮理」は調え合わせること。「空」は隙間・空白であって、空(から)っぽの意ではない。)

第一套 勝戦計しょうせんけい

こちらが強く敵が弱く、主導権が手にあるときの六計。共通点は、正面からぶつからないことだ。瞞天過海は非常の挙を日常の中に隠し、囲魏救趙は相手の虚(うつ)ろなところへ矛先を変え、借刀殺人は第三者に手を下させ、以逸待労は相手に先に消耗させ、趁火打劫は相手が自分から事故を起こすのを待ち、声東撃西は相手の注意をよそへ連れて行く。優勢な側が最も犯しやすい誤りは、急いで決戦を求めることだ。この一套は始めから終わりまで、優位を代償なしに現金化する方法を説いている。

第一計 瞞天過海まんてんかかい

備えが行き届けば気はゆるみ、いつも見ているものは疑われない。陰は陽の内側にあるのであって、陽の向かい側にあるのではない。きわまった陽は、そのままきわまった陰である。(隠しごとは日常の外にではなく、日常の中に置く。)

第二計 囲魏救趙いぎきゅうちょう

敵を一つに固めさせるより、分けさせるほうがよい。敵の充実したところに当たるより、虚ろなところに当たるほうがよい。

第三計 借刀殺人しゃくとうさつじん

敵ははっきりしているが、味方につくかどうかの相手はまだ決めかねている。その相手を引き入れて敵を討たせ、自分は力を出さない。『易』損の卦の理を推し広げたものである。

第四計 以逸待労いいつたいろう

敵を疲弊させるのに、戦う必要はない。こちらの剛を減らし、柔を増やす。(打って疲れさせるのではなく、待って疲れさせる。)

第五計 趁火打劫ちんかだきょう

敵の被った損害が大きければ、その勢いに乗じて利を取る。剛が柔を断ち切るのである。

第六計 声東撃西せいとうげきせい

敵の心が乱れてざわつき、思いが及ばなくなる。坤を下に、兌を上に置いた萃の卦の象である。相手が自分で自分を御しきれなくなったところに乗じて取る。

第二套 敵戦計てきせんけい

力が伯仲しているときの六計。正面からぶつかっても互いに食い切れない以上、勝敗は「情報」の側に落ちる。無中生有は偽りをそのまま本物にし、暗渡陳倉は明るいところの動きで暗いところの動きを覆い、隔岸観火は打たずに相手が自分で割れるのを待ち、笑裏蔵刀は善意を覆いに使い、李代桃僵は一部を進んで捨てて全局を取り、順手牽羊は相手が取りこぼした小さなところを少しずつ持っていく。対等な局面の中で、どうやって不対等をこしらえるか——この一套はそれを説く。

第七計 無中生有むちゅうしょうゆう

欺くのだが、欺くだけで終わらない。欺いて見せたものを、そのまま実(じつ)にしてしまう。少陰から太陰へ、太陰から太陽へと転じる。

第八計 暗渡陳倉あんとちんそう

目に見える動きをこちらから見せる。相手がそれに構えて静かに待ち受けているのを利用する。益の卦——動きて巽(したが)う、である。

第九計 隔岸観火かくがんかんか

表向きの秩序が食い違って乱れているなら、こちらは静かにその破れ目を待つ。荒れ狂って好き放題にふるまえば、その勢いは自分から倒れる。豫の卦——順にしたがって動き、動いて順にしたがう。

第十計 笑裏蔵刀しょうりぞうとう

信じさせて安心させ、裏でそれを図る。備えが整ってから動き、途中で変事が起きないようにする。内は剛、外は柔である。

第十一計 李代桃僵りだいとうきょう

情勢からいって損は避けられない。ならば陰の側を損なって陽の側を益する。(局面の一部を進んで捨て、全体を取る。)

第十二計 順手牽羊じゅんしゅけんよう

わずかな隙も必ず乗じる。わずかな利も必ず取る。少陰が少陽に転じる。

第三套 攻戦計こうせんけい

守りから攻めに転じ、こちらから打って出るときの六計。攻めの難しさは打てるかどうかではなく、打つ前に見えているか、打った後に収まるかにある。打草驚蛇はまず探ってから進み、借屍還魂は誰も欲しがらない名分を旗印に立て、調虎離山は堅いところを攻めずに相手を堅固な場から引き出し、欲擒故縦は緩めて相手が自分から崩れるのを待ち、抛磚引玉は似ているだけの餌ではなく同類の餌を使い、擒賊擒王は相手の要にすべての力を賭ける。

第十三計 打草驚蛇だそうきょうだ

疑わしいところは叩いて実情を確かめ、見きわめてから動く。繰り返し確かめることが、隠れているものを引き出す仲立ちとなる。

第十四計 借屍還魂しゃくしかんこん

役に立つものは借りられない。役に立たないものなら、向こうから借りてくれと言ってくる。その役に立たないものを借りて使うのである。『易』蒙の卦に「我れ童蒙に求むるにあらず、童蒙我れに求む」とある通りだ。

第十五計 調虎離山ちょうこりざん

天の時を待って相手を苦しめ、人を使って誘い出す。蹇の卦——往けば難儀、来たれば連なる。

第十六計 欲擒故縦よくきんこしょう

追い詰めれば刃を返してくる。逃がしてやれば勢いは減る。ぴたりと付いていくが、追い立てはしない。気力を使い果たさせ、戦意を消し、散ったところで捕らえる。刃に血を塗らずに済む。需の卦——孚(まこと)あり、光あり。

第十七計 抛磚引玉ほうせんいんぎょく

同じ類のものを見せて誘い出し、蒙(くら)いところを撃つ。

第十八計 擒賊擒王きんぞくきんおう

堅いところを砕き、頭(かしら)を奪って、全体をばらばらにする。「竜、野に戦う」——その道は窮まるのである。

第四套 混戦計こんせんけい

多方が入り乱れ、敵味方の線が引けないときの六計。混乱した局面で最も価値があるのは勝つことではなく、引きずり込まれないことだ。釜底抽薪は相手の力にではなく勢いのもとに手を掛け、混水摸魚はかき回した中から弱いものを取り、金蟬脱殻は形を残して人だけ抜き、関門捉賊が恐れているのは逃げられることではなく他人に拾われることであり、遠交近攻は距離で敵と味方を分け、仮道伐虢は道を借りたうえで貸してくれた家ごと呑む。この一套の地色はこうだ——乱れた局面では、実力より位置のほうが物を言う。

第十九計 釜底抽薪ふていちゅうしん

相手の力に正面から当たらず、その勢いのもとを消す。兌を下に、乾を上に置いた履の卦の象である。

第二十計 混水摸魚こんすいぼぎょ

内側の乱れに乗じ、弱くて主(あるじ)のない状態を利用する。随の卦——暮れに向かえば入りて休息す。

第二十一計 金蟬脱殻きんせんだっかく

形はそのまま残し、勢いも保たせておく。味方は疑わず、敵も動かない。巽にして止まる、蠱の卦である。

第二十二計 関門捉賊かんもんそくぞく

小さな敵は囲い込む。剝の卦——往くところあるに利あらず。(追いかけるのは得にならない。)

第二十三計 遠交近攻えんこうきんこう

地形に阻まれ、勢いに阻まれるときは、近いところから取るのが利であり、遠いところは隔てておくことで害を避ける。上に火、下に沢——睽の卦である。

第二十四計 仮道伐虢かどうばつかく

二つの大国に挟まれた小国が、敵に脅されて従おうとしている。こちらは勢いを貸してやる形で入り込む。困の卦——言あるも信ぜられず。

第五套 并戦計へいせんけい

友軍と肩を並べて戦いながら、腹の中ではその友軍を呑む気でいるときの六計。この一套ほど本書の地色が出るところはない。「并戦」の相手は、名目のうえでは味方なのである。偸梁換柱は友軍の骨格を抜き取り、指桑罵槐は他人の過ちを使って従わない部下を叩き、仮痴不癲は時機が来るまで愚か者を演じ、上屋抽梯はまず梯子を掛けてやってから外し、樹上開花は他人の作った局で自分の場を張り、反客為主は五段階に分けて客の座を主の座に変える。

第二十五計 偸梁換柱とうりょうかんちゅう

しきりに陣立てを変えさせ、その精鋭を抜き取る。相手が自分から崩れるのを待って、それから乗じる。車輪を後ろへ引くようなものだ。

第二十六計 指桑罵槐しそうばかい

大が小を抑えるときは、警告することでこちらへ従わせる。剛が中にあって応じ、険を行きながらも順(したが)う。

第二十七計 仮痴不癲かちふてん

知らぬふりをして動かないほうがよく、知ったふりをして勝手に動くのは良くない。静かにしていて機を漏らさない。雲と雷、屯の卦である。

第二十八計 上屋抽梯じょうおくちゅうてい

便宜を貸してやり、そそのかして前へ出させ、後ろの支えを断って、死地に陥れる。「毒に遇う」——位が当たっていないからである。

第二十九計 樹上開花じゅじょうかいか

他人の作った局面を借りて陣立てを張る。実力は小さくとも勢いは大きく見える。「鴻(おおとり)、陸に漸(すす)む。その羽は儀(かざり)に用うべし」。

第三十計 反客為主はんかくいしゅ

隙に乗じて足を差し入れ、相手の要をおさえる。漸の卦の、少しずつ進むということである。

第六套 敗戦計はいせんけい

こちらが弱く敵が強く、すでに下風に立っているときの六計。ここまで来ると、使えるものは相手の判断力しか残っていない。美人計は兵ではなく将を攻め、空城計は本当に兵がいないときに「いない」をそのまま並べて見せ、反間計は相手の耳目をこちらの耳目に変え、苦肉計は自分の皮肉を差し出して信じられる一言と換え、連環計は相手を自分の規模で自縛させ、走為上はこの一戦は戦えないと認める。末計が全書の締めくくりだ——「走れば未だ敗れず、未だ敗れざる者は、勝の転機なり」。負けないことが、盤をひっくり返す機会を残す。

第三十一計 美人計びじんけい

兵の強い相手なら、その将を攻める。将が知恵者なら、その情を攻める。将が弱れば兵は崩れ、その勢いはひとりでに萎む。「寇(あだ)を御(ふせ)ぐに利あり」——順にして相い保つ。

第三十二計 空城計くうじょうけい

虚であるものを、虚のまま見せる。疑いの中からさらに疑いが生じる。剛と柔の境目にあって、奇の上にまた奇である。

第三十三計 反間計はんかんけい

疑いの中の疑い。内側から親しませるのであって、こちらが自分を失うわけではない。

第三十四計 苦肉計くにくけい

人は自分で自分を害さないものだ、だから害を受けているならそれは本当だろう——そう思わせる。偽りを真とし真を偽りとして、間諜が働けるようになる。「童蒙の吉」——順にして巽(したが)う。

第三十五計 連環計れんかんけい

将が多く兵が多ければ、正面からは当たれない。相手自身が互いの足かせになるよう仕向け、その勢いを削ぐ。「師に在りて中(ちゅう)なれば吉」——天の寵(めぐみ)を承(う)けるのである。

第三十六計 走為上そういじょう

軍をまるごと退いて敵を避ける。「左に次(やど)るも咎なし」——常道を失ってはいない。

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